マクロビオティックライフ講座 第2回「食べ物を丸ごといただきましょう(一物全体)」

2020.07.29

マクロビオティック

食物繊維が少ない欧米型の食生活
精白・精製した食べ物が食物繊維不足をまねきます
食生活が豊かになるにしたがって、日本では大腸ガンや直腸ガンが急増してきました。そうした腸の病気の原因となる食事が、食物繊維の非常に少ない欧米型の食生活(高脂肪・高たんぱく・高糖分・低食物繊維)であることが疫学調査で明らかになっています。
見た目の良さや食べやすさなどの経済効率を追い求めた結果、精白米、精白小麦粉、白砂糖、精製塩、繊維を漉(こ)した果物ジュースなど、精白や精製した食べ物が全盛となっています。

食物繊維の重要性が再認識されています
一方で、食物繊維を配合した機能性食品が注目されるなど、今まで役に立たないカスとみなされていたものに非常にすばらしい力があることが分かってきました。アメリカではすでに、1977年アメリカ上院・栄養問題特別委員会により発表された「食事の改善目標(マクガバンポート)」では、「果物、野菜、穀物はなるべく精白されていないものを摂るように」と指摘しています。また、「未精白の穀物はビタミン類、ミネラル、タンパク質などの良好な供給源」とも発表されています。ですから今、アメリカでは黒パンや玄米が健康美容食として大人気なのです。

 

生きている玄米
未精白の穀物には強い生命力があります
お米でいうと、「糠」のついた玄米が最も調和のとれた食物といえます。玄米の糠にはビタミンやミネラル、酵素、食物繊維がたくさん含まれています。そうした成分が体内の代謝機能を助けてくれるのです。
中でも一番大切なことは「玄米は生きている」ということです。精白した白米は水に浸けておくと腐ってしまいますが、玄米は発芽します。以前、2000年前の化石化したハスの種が見つかり、その種が発芽したというニュースがありましたが、種というのはそれほど生命力を蓄える力があるのです。未精白の穀物の素晴らしさは、この生命力にあります。

自然の食べ物にはバランス調整能力が備わっています
自然界の絶妙なバランス(調和)のもとでいのちが創られています。一方方向に働く医薬品とは違い、いのちある食べ物には解毒や排泄という「浄化」の働きと、「滋養供給」という相反する働きが同時に存在します。天然の食べ物には「バランス調整」という、医薬品にはない、優れた機能が備わっています。

 

食べ物は全体で調和・機能する
野菜は全て食べることで機能します
野菜も、葉の部分だけでなく、根を食べてはじめて全体として調和します。大根であれば、葉を一緒に食べると薬効が高まります。
マクロビオティック料理ではゴボウやレンコンなども皮をむかず、水にさらさず、全てを活かして料理します。野菜に含まれる陰性なアク気もミネラルなので、陽性の塩や梅酢、火により、甘味と旨みに変換して調理します。野菜の皮には、無機質である土を有機質に変換する働きがあり、野菜を丸ごといただくことは天地のエネルギーを摂りこみ、身体を活性させる秘訣なのです。

大切なのはカロリーではなく生命力
塩も塩化ナトリウムなどの精製した化学塩ではなく、ミネラルを含む自然塩でなければ調和しません。にがりには血圧を下げる成分があるので、高血圧の心配もありません。
魚も頭からしっぽ、骨、内臓まで丸ごと活かして料理するとバランスが取れます。ですから、丸ごと食べられる小魚が全体食には向いています。
生命は部分の集まりではありません。全体としてはじめて調和して機能するのです。栄養学ではカロリーを重視しますが、大切なのはカロリー(量)ではなく、生命力(質)なのです。
白米と玄米は、カロリーは同じでも生命力という点では大きく異なります。有機栽培のものとそうでないものでも、生命力は違ってきます。「全体」という調和した形で食物は価値をもち、それをいただくことを一物全体食といいます。

 

岡部賢二(おかべけんじ)

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食であると気づき、マクロビオティックを学ぶ。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足し、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。著書に「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)などがある。
ムスビの会HP(https://www.musubinewmacro.com/