マクロビオティックライフ講座 第7回「陰陽の調和」

2020.10.29

マクロビオティック

「陰」は拡散するエネルギー
お酢は体の冷却材
「陰」は拡散するエネルギーで、陰の性質は「冷やす」、「ゆるめる」、「溶かす」に代表されます。人間の体質にたとえると、「冷え性」、「低血圧」、「貧血」というタイプです。
お酢は陰の性質が強く、夏に酢のものを食べると毛穴が開いて熱が逃げるので、体の冷却材となります。逆にお酢を秋から冬の寒くなる時期に摂りすぎると、熱が逃げるため冷え性になってしまいます。
暑がりで汗かき、高血圧気味で筋肉質という、血が濃く熱がこもっている人が酢の物として摂る分には問題ありませんが、寒がりで手足が冷たく、低血圧で痩せ型の、血の薄い人がお酢を摂りすぎると逆効果になります。

お酢の上手な摂り方 
お酢は血のかたまりである肉や魚などの動物性食品の分解酵素として使うと効果的です。酢豚やしめ鯖、酢ダコ、お寿司のように、タンパク質が固く、消化がよくない動物性の食べ物にお酢を合わせると、消化促進の働きをしてくれます。白砂糖やフルーツもお酢と同じように陰の性質が強い食べ物です。

 

「陽」は収縮するエネルギー
動物性は陽性が強すぎます
「陽」とは収縮するエネルギーです。陽性の性質は「温める」、「しめる」、「固める」に代表され、人間の体質に例えると、暑がりで汗かき、高血圧気味で筋肉質という血の気の多いタイプです。食べ物では、熱すると固まる食べ物です。
お肉や魚、卵、ハム、ウィンナーなどの動物性たんぱく質は火にかけると収縮して固まります。収縮しやすい動物性たんぱく質を食べ過ぎると熱が体にこもってしまい、暑がりで汗かきになります。さらに、血管が収縮するので、高血圧気味になり、筋肉も硬くなります。
血管や血液も固まりやすくなるので、血栓やポリープ、ガンなどのかたまりができやすくなり、動脈硬化が進むため、脳梗塞や心筋梗塞などの血管のトラブルも出やすくなります。また、牛乳が固まったチーズやバター、ヨーグルトなども同じような「固まる」病気を引き起こす原因となります。

動物性は陰性のものと上手く組み合わせて
このような収縮する性質の強い動物性たんぱく質には、拡散する力の強いお酢や果物、砂糖を合わせると分解を促進してくれます。すき焼きに砂糖を入れたり、寿司飯に酢を入れるのも動物性たんぱく質の分解を促進するためです。また、お肉をたくさん食べるとアイスクリームやケーキ、清涼飲料水などの陰性の甘いものが食べたくなり、魚の煮干しを食べ過ぎると、その分解のためにフルーツが欲しくなります。

 

陰陽調和食を
中庸の食べ物で陰陽のバランスを
陰性と陽性の中間となるのが「中庸」です。中庸に近い食べ物を摂ることが、陰陽のバランスをとる一番簡単な方法といえます。
陰性体質の人には動物性食品ほど強力ではなく、適度な収縮性を持つ根菜類や雑穀、そば、葛、ごま塩や鉄火味噌などの塩気の効いた食べ物を使ってゆるんだ体を引き締めて行きます。
陽性の体質の人には、適度に拡散してくれる緑の野菜がおすすめです。火にかけると溶けて拡散していく葉物野菜には、体を適度に冷やして血の流れを良くするはたらきがあります。また、麦類や野草、海藻、きのこを使って薄味で料理することで、締まった体をほぐしていきます。ご飯に野菜、海藻、漬け物、味噌汁といった日本古来の食事は、陰陽どちらの体質にも合う、世界的にも評価の高い食品です。

 

岡部賢二(おかべけんじ)

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食であると気づき、マクロビオティックを学ぶ。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足し、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。著書に「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)などがある。
ムスビの会HP(https://www.musubinewmacro.com/