マクロビオティックライフ講座 第21回「木の芽時の過ごし方」

2021.03.15

マクロビオティック

体も衣替え 血液が汚れると不調に
春先は木の芽時といって、冬場に体内に蓄積した汚れが溶け出し、その浄化役である肝臓が疲れやすい時期です。秋から冬にかけ、体は寒さに耐えられるように皮下脂肪をためこみます。ところが、春先になると、衣替えをするように、体も蓄えた脂肪を溶かし、夏の寒さに順応できる涼しい体に変化するのです。

この時に溶けだした脂肪の処理にあたるのが肝臓で、胆のうと協力して不要な脂を脂肪酸から胆汁に変えて腸に排泄します。ところが、脂の処理に追われて肝臓が疲れてくると血液中に脂が流れ、血液が汚れることになります。ドロドロとした血液が人体を循環すると、毛細血管で目詰まりが起こり、さまざまな不調が現れます。

目で血液の滞りが起きると、眼精疲労やドライアイ、白内障や緑内障、光がまぶしい、目がかすむ、といった症状が現れます。汚れた血液が脳に滞ると脳は興奮状態になり、イライラする、怒りっぽい、不機嫌になる、といった怒りの感情が出やすくなります。さらに筋肉に汚れた血液が停滞すると筋肉痛やけんしょう炎、五十肩、顔面神経麻痺、こむら返り、ひきつけ、てんかん、熱性けいれん、といった筋肉の運動障害がおこります。

 

五月病は肝臓の疲れ!?食で肝臓をいたわる
3月初めくらいから増え始める花粉症も、肝臓で解毒できなかった汚れを鼻水やくしゃみで排泄しようとする浄化の反応とみることができます。春先にひどくなるアトピー性皮膚炎も同様です。5月の連休のころになると、脳の血流の悪化から、五月病といった自律神経の失調も起こりやすくなります。仕事を変わりたい、学校に行きたくない、落ち着きがなくなる、といった意識状態であれば、肝臓の疲れがあるとみて間違いないでしょう。

こんなときには肝臓をいたわる食薬が必要になります。肝臓が求める味は酸味。春先は酸味が美味しく感じられる季節で、酢の物や酢味噌和えといった料理や、梅肉エキス、梅干、あんず、クコ、柑橘類などで酸味を補ってあげると体が喜びます。酸味の成分であるクエン酸などが脂を溶かしてくれるからです。また、冬場のコトコト煮込む料理から、和え物やお浸し、蒸し野菜といった料理法に変えることも大切です。

 

野草はお浸しや和え物を。油脂は肝臓の負担に
春先に弱りやすい肝臓の働きを補うのが、この時期に採れる野草類です。菜の花やウド、タラの芽、フキノトウ、わらび、ぜんまい、のびる、よもぎなどの野草に含まれるビタミンやミネラル、酵素、食物繊維、抗酸化物質などが洗剤のような働きをして、肝臓にたまった脂汚れを排泄してくれます。ただし、野草のてんぷらばかりではなく、お浸しやきんぴら、和え物など、できるだけ油を使わずに料理しましょう。春に収穫される春キャベツ、春玉ねぎ、ブロッコリー、わかめなどの野菜や海草も肝臓の強化食になります。

この時期に食べ過ぎるとよくないものは、炒め物や揚げ物、脂がのった肉類や魚類、卵、乳製品です。脂の処理でめいっぱいになっている肝臓に、さらに負担をかける油脂を減らしてください。どうしても食べる場合は、大根おろしや玉ねぎスライス、生姜、ハーブ類といった脂を分解する働きの強い薬味を生で添えるようにしましょう。

 

発酵食品や発芽した食べ物で春先の解毒力を高めよう
現在の医療では、肝臓病の方には高タンパクの食事をすすめますが、たんぱく質を摂りすぎると腸内で腐敗しやすいため、腐敗毒素の処理で肝臓が疲れてしまいます。肝臓の具合が悪い方は、極力動物性たんぱく質は摂らないことをおすすめします。豆腐やグルテン類などの大豆加工品も肝臓の調子が悪いときには控えた方がよいです。

実は、肝臓にとっては脂肪・高たんぱく食が大敵で、悪玉菌のエサになりやすい分子量の大きい脂肪やたんぱく質は、摂りすぎると腸内環境を悪くし、腸内で発生した毒素の浄化役である肝臓にダメージを与えます。また、加工食品に含まれる食品添加物、一般の野菜に含まれる農薬などの化学物質も肝臓に負担をかけるので注意してください。反対に、伝統製法で作られた味噌や醤油、漬物、梅干、お酢などの発酵食品は肝臓の解毒力を強めてくれる食材です。

木の芽時には、発芽玄米やもやし、アルアルファなどの発芽した食物も肝臓の味方になります。そうした芽の吹くちからのあるものにはビタミンや酵素が多く含まれ、これが不要な脂を洗い流してくれるのです。そして、なによりも少食や素食、プチ断食が肝臓にとっての最高の養生法です。春先の新月の日は、とくに解毒や排泄、洗浄、発汗の力が高まるときなので、プチ断食で肝臓をいたわってあげましょう。

 

岡部賢二(おかべけんじ)

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食であると気づき、マクロビオティックを学ぶ。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足し、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。著書に「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)などがある。
ムスビの会HP(https://www.musubinewmacro.com/