マクロビオティックライフ講座 第23回「夏バテの原因は冷え」

2021.04.15

マクロビオティック

冷房による冷えのぼせに注意
夏バテの本当の原因は暑さより「冷え」にあります。その要因は冷房で、冷たい冷気は部屋の底にたまり、足腰を冷やすからです。足腰が冷えると冷たい血液が胃腸や子宮を冷やしながら心臓に戻り、食欲不振や消化不良、生理痛や生理不順などの症状となって現れます。足腰が冷えると熱は下半身の方に逃げていくため、方や頭に熱がこもって「冷えのぼせ」状態となり、のどの渇きや肩こり、頭痛などの症状が出やすくなります。

また、脳に長時間うっ血が続くと、脳梗塞や耳鳴り、不眠症などのトラブルを招くことにもなります。通常、脳の血液が下半身に下りていき、脳の温度が2、3度下がると眠くなります。これを脳のクールダウンと呼びます。ところが、冷えのぼせが続くとクールダウンができず、夜眠れないという症状を招きやすくなるのです。

また、アイスクリームや清涼飲料水などの冷たい食べ物や飲み物により冷えがさらに助長されてしまいます。体の内側が冷やされると血液が収縮するため、血液の循環が悪くなります。血液は、体に中央に発生した熱を体のすみずみに伝えますが、血行が悪くなると、手足などの抹消にまで十分熱が伝わりません。この結構の悪さが冷え性の原因のひとつなのです。

 

梅醤番茶で塩分補給と血行促進
とはいっても、人間の体は自律神経が働いて常に一定の状態に保たれています。ですから、少々冷えても体温はまたすぐに元に戻るのが普通です。ところが自律神経の働きは、冷え過ぎたり、食べ過ぎたり、不規則な生活が続いたり、ストレスにさらされると乱れます。また、ホルモンバランスの乱れからも自律神経は乱れます。ストレスやホルモンバランスの乱れは冷えを助長してしまいます。

こうした頑固な冷えや血行不良の状態を東洋医学では「お血」とよんで、体の病的な状態としてとらえます。血液の循環が滞ってしまうことで、いろいろな場所で機能が低下し、こりやだるさ、痛みが起きたり、抵抗力を低下させます。まさに冷えは万病のもとなのです。

この冷えバテの予防には、梅醤番茶がおすすめです。梅醤番茶の塩分補給作用と血行促進作用により、全身の血行がよくなります。また、夏の紫外線によって体内に生じた疲労物質(乳酸)を分解するクエン酸を豊富に含むため、夏バテ特有の倦怠感を防ぎます。さらに梅醤番茶に含まれる塩分により、胃腸の働きの低下による食欲不振も改善してくれます。また、炎天下での農作業やスポーツには、梅酢を5、6倍に薄めた梅酢ドリンクを合間に飲むと熱中症や脱水症状の予防になります。

 

その他の冷え改善マクロビオティック食材
自律神経の調整役には、葛や胡麻を使います。葛に含まれるイソフラボノイドには自律神経の働きを整える作用があり、黒胡麻にはホルモンバランスを整え、自律神経を安定させる作用があります。ですから葛粉を溶いて入れた梅醤番茶やゴマ塩、ごま豆腐などを活用するとよいでしょう。

漢方では冷えからくるお血の改善には高麗人参を配合した漢方薬を使います。根菜類には血行を下半身に下げ、足腰を温める頭寒足熱の働きがあるのです。マクロビオティックでは根菜類を味噌と一緒に炒りあげた鉄火味噌やタンポポの根を配合したタンポポコーヒーなどが冷えの改善に用いられます。

また、下半身を冷やさないよう、薄着はせず、腹巻き、膝かけ、厚手のソックス、室内履きなど冷房による冷え対策も必要です。入浴はシャワーではなく、漢方入浴剤や塩を入れたお風呂でゆうくりと体を温めるようにしましょう。

 

岡部賢二(おかべけんじ)

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食であると気づき、マクロビオティックを学ぶ。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足し、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。著書に「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)などがある。
ムスビの会HP(https://www.musubinewmacro.com/