マクロビオティックライフ講座 第24回「雑穀のパワー」

2021.04.30

マクロビオティック

生命力旺盛な雑穀のチカラ
お米以外のイネ科の作物であるアワ(粟)やヒエ、キビなどは総称して「雑穀」と呼ばれています。これらの雑穀は生命力が強く、荒地や寒冷地でも育つため、お米ができない地域で昔から栽培されてきました。

阿波と呼ばれた四国や吉備の国岡山は乾燥した気候のため、干ばつに強いアワやキビが昔から栽培されてきました。また、寒冷地の東北地方では、寒さに強いヒエが栽培されてきました。これらの雑穀全般には亜鉛やカルシウム、マグネシウム、鉄などの抗酸化ミネラルやビタミンB群などが豊富に含まれています。アワ・キビ・ヒエは1本の穂に4000~5000粒もの実がなるほど生命力旺盛な穀物なので、日々食べることで人間の生命力も強まり、子宝も授かりやすくなります。

 

「冷え」に耐えることに由来するヒエ
ヒエには独特の苦み(陽性)があり、形は雑穀の中では最も小粒で引き締まっています(陽性)。とはいっても、人間また、寒さや湿害に強く(陽性)、酸性土壌や塩害に強い(陽性)といった性質を持つため、寒冷地でもよく育ちます。ヒエの名前は「冷え」に耐えることに由来するそうです。二宮尊徳が、冷害が来ることをいち早く察知し、米の代わりに寒さに強いヒエを農民に植えさせ、飢餓を乗り切ることができたという話は有名です。

ヒエは、たんぱく質や脂肪分を豊富に含むので栄養価が高いだけでなく、食物繊維や亜鉛も多く含む健康食です。ただし、粘り気がなく、冷えるとボソボソするので、ご飯に少量混ぜて炊くとよいでしょう。

 

アワは胃や膵臓の薬膳
アワは味が淡いことからアワと呼ばれるようになったそうで、陰陽五行の考え方では、胃や膵臓の食薬となります。実際、アワには胃の働きを良くする働きや、膵臓が管理する脂肪代謝の働きを改善し、血中のコレステロールを増やす作用があります。また、皮下脂肪を合成するなどの薬効があるので、脂肪代謝機能が悪く、いくら食べても太れないという痩せの大食いの人は、ご飯にアワを少し加えて食べるとよいでしょう。

胃や膵臓が丈夫になると、皮膚の皮脂線からの潤い物質の分泌力が高まるので、肌の乾燥による肌荒れを防いでくれます。アワには食物繊維と鉄分が豊富に含まれています。その食物繊維が便秘を解消し、腸内環境を良くするので、特にアトピー性皮膚炎の方にはぴったりの雑穀です。また、豊富な鉄分が貧血の予防薬として働きます。アワはお菓子に用いてもよいですし、もち米に混ぜてアワ餅にしても美味しいです。

 

血液循環をよくするキビ
キビ団子で有名なキビもまた、胃や膵臓の働きを良くする雑穀ですが、陰陽五行では心臓と小腸の経路に効く五穀であるとされています。キビのたんぱく質には、善玉コレステロールを増やすことで血液循環をよくする働きがあります。その結果、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの血管のサビつき症状を予防することができるのです。キビキビと動き回れる機敏な行動力にはキビを、ですね。うるちきびは米と混ぜて炊き、もちきびは団子やお菓子にして使います。

 

食物繊維が豊富な麦
麦(大麦)は食物繊維が豊富な雑穀で、白米と比較すると食物繊維は約19倍もあります。また、白米の4倍の速さ消化されるため、あまり噛まずに食べるとろろ飯として食べられてきました。胃腸が弱く、食べても太れない人は、ご飯に麦を混ぜて食べるとよいでしょう。胃腸の働きがよくなるだけでなく、食物繊維によって腸内環境が整うので、皮膚がきれいなっていきます。

麦に含まれる水溶性食物繊維には血糖値を下げたり、血中の悪玉コレステロールを抑制したりといった働きもあるので、生活習慣病の予防としてもおすすめです。山梨県の有名な長寿の村、棡原は、山間地でお米が育たず、麦ごはんやキビなどの雑穀を食べていたそうです。日本人の長寿の秘訣は雑穀にあり、ですね。

 

岡部賢二(おかべけんじ)

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食であると気づき、マクロビオティックを学ぶ。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足し、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。著書に「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)などがある。
ムスビの会HP(https://www.musubinewmacro.com/