マクロビオティックライフ講座 第13回「うつ病の改善はお腹が決め手」

2021.01.10

マクロビオティック

うつ病の人の多くはお腹が硬くて冷えている
日本でのうつ病患者の数は100万人を超えるということです。心療内科では抗うつ剤が処方されたり、カウンセラーによる心のケアがおこなわれたりしていますが、どれも決定的な改善の決め手にはなっていないようです。

うつ病など、心に問題をかけているひとに多くみられるのが、お腹が硬くて冷えているということです。お腹が硬いとなぜそのような傾向に陥りやすいのでしょうか。実は、お腹と脳は同じ細胞からできているからなのです。

マクロビオティックの発生学では、外杯葉というところから、まず腸ができ、皮膚ができ、最後に脳ができると捉えています。腸も脳も同じ考える細胞であると考えていいでしょう。目に見えないさまざまな情報をキャッチするのが皮膚です。洗濯ものの乾き具合も目には見えませんが、触ると良く分かりますね。皮膚は五感の中心と言われていて、最終判断は皮膚が決定権を持っているのです。また、マッサージなどが気持よく感じるのは、皮膚に心地よさを感じるセンサーがあるからなのです。

 

心の問題の解決には腸の改善が近道
お腹の細胞も皮膚と同じで、どんな食べ物が心地いいかを判断するセンサーがあるようです。食べ過ぎると不快に感じますし、空腹のときはすっきり感があるはずです。いつも頭がもやもやしてスッキリしないときは、お腹に食べ物が詰まっている状態とみていいでしょう。1週間近く出なかった便が気持よく出たときは、天にも昇る幸せ感がありませんか。気持ちがスッキリしないという心の問題の解決には、このように腸の改善が近道なのです。

昔の人はこのことを知っていて、お腹に汚れがたまると「腹が立つ」とか、「腸(はらわた)が煮えくり返る思いをした」「腹のムシが収まらない」などと表現してきました。また、食べ物がうまく消化できないと「腑に落ちない」状態となり、「はい」といえない性格となります。お腹の中で食べ物が腐り始めると「腹黒い」性格になり、自分さえよければよいという自己中心的な考え方をするようになるのです。

お腹が安定すると、「腹をくくる」「腹を据える」ことができ、何事にも動じない安定した気持ちになれます。そのためには、お腹という体の中心をしっかりと養うことが大切で、365日食べても飽きない食べ物を摂ることが重要です。ご飯、味噌汁、漬物毎日食べても飽きがきませんよね。このような食べ物を食べていると、不安や心配が減り、自信が備わり、気持が楽になります。

 

葛は天然の精神安定剤
ところが精神的な病を持つ人は、ご飯や味噌汁を食べない人が多いのです。パンやお菓子でお腹を満たしてしまっています。しかも、噛まずに食べるのも特徴です。ですから、ご飯をしっかり噛んで食べるようにしましょう。ご飯は、表皮に天然の精神安定剤であるガンマーオリザノールという成分を含む玄米であればさらにいいでしょう。発酵食品である漬物や味噌汁は、豊富なビタミンやミネラル、アミノ酸、食物繊維により、腸内細菌の働きを良くし、お腹の調子を整えてくれます。
 
お腹を温めると腸内細菌の働きがよくなり、腸の蠕動運動が増し、滞っていた汚れ(宿便)が流れ始めます。葛を利用するとお腹が温まるだけでなく、お腹の緊張がほぐれてきます。不思議なことにお腹を温めると、全身の筋肉の緊張もほぐれるため、血液循環が良くなり、身体全体が温まってきます。これはお腹にある太陽神経叢が刺激されることで、副交感神経にスイッチが入るためではないかと思われます。太陽神経叢とは「第二の脳」と呼ばれる、脳からの指令を受け、臓器をコントロールする自律神経の中枢のことです。葛湯や葛梅醤番茶を飲んだり、葛をとろみとして料理に使うと気持ちが安定してきます。葛のお菓子もおすすめです。葛をとろみとして料理に使うと気持ちが安定してきます。葛は、天然の精神安定剤といえるでしょう。

 

手当て法もおススメ
外からは生姜湿布やこんにゃく湿布で下腹を温めるようにします。血行がよくなり、全身から汗が出て新陳代謝が活発になります。新月や満月に夕食を抜くプチ断食をすると腸がきれいになるため、改善が早くなります。葛入りの玄米甘酒を飲みながら、夕食を抜いてみてください。腸がきれいになるにつれて気持ちの変化がきっと現れるはずです。

 

《生姜湿布の作り方》
①生姜をおろし金ですりおろす。または生姜粉末を使う。
②①を布袋に入れ、ひもで結ぶ。
③沸騰しない程度に温めたお湯(約70度)を洗面器に入れ、②をつけて振る
④③の中にタオルを浸し、固すぎない程度に絞る
④温めたい場所に当てる。やけどしないように気をつけてください。

 

岡部賢二(おかべけんじ)

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食であると気づき、マクロビオティックを学ぶ。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足し、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。著書に「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)などがある。
ムスビの会HP(https://www.musubinewmacro.com/