マクロビオティックライフ講座 第16回「紫外線の効用」

2021.02.01

マクロビオティック

紫外線は浴びてはいけない?
1982年、イギリスの医学誌「ランセット」に、皮膚ガンは生活様式や職業柄いつも日光に照らされている人よりも、オフィス労働者にかなり多いこと、皮膚ガンが進行する危険性が最も低いのは、戸外でよく日光浴をする人々であることが発表されました。また、1日中蛍光灯の下で室内労働をする人は皮膚ガンのできる危険性が2倍になることや、動物細胞の培養液にオフィスの蛍光灯をあてると突然変異を起こすことも示されています。

さらに、アメリカの学者の研究で、日焼け止めに使われている安息香酸という添加物に発ガン性があることや、日焼け止めの中に配合されているオイルが皮膚呼吸を妨げ、油の酸化によって過酸化脂質が生じるところから皮膚ガンになりやすいという報告もあります。皮膚ガンは日焼け止めを塗るほど増えるという結果が出たわけです。

オゾン層が破壊されて有害紫外線が地球に降り注ぎ、皮膚ガンの増加に拍車をかけているという常識を持っている人が多いと思いますが、実際はそうではないようです。それどころか、紫外線の不足によってかえって肥満や皮膚炎、感染症、糖尿病、性的機能障害、視覚障害、うつ病、ガンなどの病気が増えるという常識をくつがえす研究が続々と発表されています。

 

光と色のはたらき
実は、光と色には食べ物にある大切な要素であるビタミンやミネラルなどを体内に吸収して使うための触媒の役割や、性ホルモンの分泌を活性化して不妊症の改善、アレルギーの改善、血糖値を下げたり、ガンを抑制したりする働きがあります。さらに、心の緊張状態を緩めて、心の障害を取り除く働きがあることも最先端の研究でわかってきました。

数か月間太陽が照らないノルウェーやフィンランドといった北欧諸国では、日光にあたる時間が少なくなると、いらだちや疲労、不眠症、うつ病、アルコール依存症、自殺が増えるそうで、日照時間とそれらの病気との因果関係が認められています。また、日本の山陰地方でも、リュウマチやうつ病、自殺、皮膚ガンの発生率が高いといわれているのですが、これもこの地方独特のどんよりとした空がもたらす日照不足が原因ではないかと思われます。実際に人間は日光を奪われると顔が青白く締まりがなくなり、無気力な状態になってしまいます。牢獄に長期間隔離されるとそのような状態になる例がよく見られるのです。

 

光のエネルギーを体内に取り込むには
光のエネルギーを体に取り込む簡単な方法は、太陽光線を充電した食べ物を食べることです。梅干も紫外線の持つ殺菌作用によって、土用の次期に天日に干すとカビがなくなり風味が良くなります。お米は、収穫後掛け干しするとうま味が増します。千切り大根や高野豆腐、干し椎茸、海苔などの乾物は、太陽光線を浴びることでビタミンDなどの栄養素が格段に増加します。これらの食べ物は、昔から、太陽の光が不足する梅雨時期や冬に食べられてきました。

 

適度な紫外線は生命力を高める
このような食べ物を食べると骨が丈夫になり、甲状線機能が活発化することでコレステロールが値が下がり、肥満を予防する効果や、メラトニンの分泌がよくなることで不眠症を改善する効果も期待できます。日本人の知恵がつまった乾物を食卓にのせるようにすれば、光の不足がもたらすさまざまな症状を軽減できるでしょう。ところが、最近の乾物は機械乾燥したものが多いので働きが弱いようですので、使う前にもう一度天日に干すようにしてください。お米も洗ってから30分くらい天日に干すとうま味が増します。

問題は人工的に作られた合成化学物質で、それらのものは光を含みません。不自然な状態を招くのが食品添加物や農薬、除草剤、化学肥料などの化学物質なので、極力避けるようにしましょう。無農薬や有機栽培で太陽の恵みをいっぱいに受けて生育する野菜や穀物には光がいっぱい含まれています。また、春に植えて太陽光線の最も強い夏を越えて秋にできるのが米です。米は太陽光線の濃縮エキスといえるでしょう。

 

岡部賢二(おかべけんじ)

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食であると気づき、マクロビオティックを学ぶ。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足し、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。著書に「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)などがある。
ムスビの会HP(https://www.musubinewmacro.com/